確定申告
住民税の落とし穴
前回、「経費を見直そう」という記事を書きましたが、
これは所得税だけでなく、住民税にも影響を与えるお話なのです。
所得税の最低税率は、5%。
あまり節税を意識せずに申告書を作成し、
これくらいの税金で済んで良々と思っていたら、
5月に住民税の納付書が届いてビックリ!ということがあります。
住民税の税率は、10%。
所得税の最低税率の二倍の税率です。
これだけでも納付税額は、所得税の二倍の金額です。
おまけに、住民税の所得控除額は、
一部を除き、所得税のそれよりも少ないのです。
例えば、基礎控除額は、所得税では38万円ですが、
住民税では33万円です。
他にも配偶者控除や扶養控除の金額も住民税の方が少ないのです。
控除できる金額が少ないということは、納付金額は当然増えるのです。
住民税の納付書が届いて、
あまりの税額に驚いて相談に来られる方もいらっしゃいます。
更正の請求をして、住民税を減らすことはできますが、
後から出した経費を認めてもらうのは少々骨が折れます。
住民税の節税にも繋がりますので、是非、経費を見直してみましょう。
経費を見直そう
確定申告の時期になると、税務署の確定申告会場に税理士が応援に行きます。
ほとんどの方が年金所得者と給与所得者なのですが、
たまに個人事業主の方が来られます。
こういう会場に来られる個人事業主の方って大変真面目な方が多いので、
決算書を見るとほとんど経費がないんです。
こまめに領収書を集めたりするのが面倒という方もいらっしゃるのですが、
多くの方が経費に入れられるのに入れていない状態のように思います。
どういうことかと言いますと、
プライベートで使っているものは、
仕事で使用することがあっても経費に入れられないと思っているのです。
例えば、家賃。
自宅で仕事をしている個人事業主は、多いと思います。
もし自宅が賃貸であれば、仕事で使っている部分の家賃は経費で落とせるのです。
では、どのように仕事部分とプライベート部分を分ければいいのか?
仕事部分の面積がだいたい分かれば面積の比で按分すればいいです。
でも、ほとんどの場合、明確には分けられないと思います。
その場合は、少しでも仕事で使っているスペースは按分対象にして、
その按分割合を決めれば良いのです。
そう言われても、具体的な按分割合を決めかねるという方もいらっしゃると思います。
具体的にどれくらいなら経費に入れても問題ないか不安だと思います。
そういう方は、半分(50%)までならほとんどの場合、大丈夫だと思います。
6割までなら大丈夫という話もありますが、あまり無理はしない方がいいでしょう。
按分割合は、税法で規定されているわけではないので、
社会通念上どうかで考えることになります。
使用状況をきちんと説明できて、常識的な範囲内であれば良いということですね。
家賃だけでなく、電気・ガス・水道代、固定電話、携帯電話などの費用も同様です。
最初に按分割合を決めてしまえば、
翌年以降も大きな変化がない限り同じ割合で計算すればいいので、
節税のためにも経費を見直してみましょう。
税務調査の可能性を低くする申告書の作成
できれば税務調査は受けたくない。
誰もが思っていることだと思います。
しかし、事業をしている限り、必ず税務調査の可能性はあります。
では、すべての事業者が定期的に税務調査を受けているのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
税務署は、数年分の申告書を比較して、調査対象者を選んでいます。
例えば…。
売上は伸びているのに、利益はあまり出ていない。
例年と比べて金額の変動が大きい科目がある。
など、申告書を比較して、何か目立つところがあると、
税務調査の可能性が高くなります。
えぇー、そんなぁ〜。
脱税なんてしていないのに!
例年と違う事情があっただけなのに!
それでも税務調査の可能性は高くなってしまうの!?
と思われる方も多いと思います。
税務調査となると時間は取られるし、神経は使うしで、
正直、受けたくないですよね。
何かいい方法はないかしら?
そんなときは、
脱税なんてしていませんよーと確定申告でアピールすればいいのです。
白色申告の方は収支内訳書、青色申告の方は青色申告決算書に
「本年中における特殊事情」という欄があります。
ここに、売上が伸びたのに利益が出なかった事情や、
特定の科目の金額が大きくなってしまった事情などを書くのです。
特殊事情の欄は、
税務署から税金を誤魔化しているのではないかと疑われないように、
あらかじめこちらから事情説明するための欄です。
それならば、たくさん書きたい!
そんな方は、別紙に詳しく事情を書いて、
確定申告書に添付しても構いません。
更に、事情説明の裏付けとなる資料等を税務署に見てもらいたいという方は、
そちらも添付可能です。
正直に申告しているのに税務調査となると、
税務署も納税者も時間がもったいないですからね。
お互いのためにも「本年中における特殊事情」の欄は、
有効活用いたしましょう。
返礼品が人気の「ふるさと納税」の注意点
最近、人気が高まっている「ふるさと納税」。
実質2,000円の寄付(自己負担)で、
それ以上の価値のある返礼品をもらえるということが
人気の一番の理由です。
加えて、控除額の上限が約2倍になったことも、
人気を後押ししていると思われます。
ふるさと納税とは、
「寄付した金額のうち2,000円を超える金額を所得税と住民税から控除する」
という制度です。
2,000円を超える金額を青天井で控除するということではなく、
この控除できる金額には上限があります。
つまり、上限額を超えて寄付すると、
超えた金額は自己負担となるわけです。
そして、ふるさと納税をすると、今までは確定申告が必要でしたが、
もともと確定申告をする必要がない人は、
寄付先に申請書を提出すれば確定申告を省略できることになりました。
ただし、寄付先が5つまでという条件があるので、
6つ以上の自治体に寄付する場合は、今までどおり確定申告が必要です。
ここで注意点をいくつか書いておきます。
①所得税と住民税から控除される金額は、
他の自治体に寄付している分なので節税にはなりません。
自己負担となる2,000円以上の返礼品を受け取ると
お得になるというだけです。
②誰でもお得になるというわけではなく、
所得税と住民税を納めていない人は、
控除できないため全額純粋な寄付となります。
③医療費控除などで確定申告をする人は、
申請書を提出していても確定申告を省略できず、
今までどおりのふるさと納税の手続きが必要となります。
④返礼品は、非課税ではありません。
一時所得に該当しますので、
満期保険金等の他の一時所得との合計が50万円(特別控除)を超えると
課税されます。
小規模企業共済の加入で節税
小規模企業共済とは、個人事業主や会社の役員など
小規模企業の経営者の退職金制度です。
掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から控除してもらえるので、
節税をしながら退職金を積み立てられます。
掛金は、月額1,000円~70,000円の範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
加入後も掛金月額は増額・減額(一定要件が必要)できますし、
業績が悪くて掛金を納めることができない場合は、掛け止めもできます。
払込み方法は「月払い」「半年払い」「年払い」がありますので、
1年分を前納しますと全額を支払った年の所得から控除することができます。
共済金の受取りは、一括の場合は退職金扱い、
分割の場合は公的年金等扱いとなりますので、
受取り時も税制面で優遇されています。
このように税制面で優遇された制度ではありますが、
原則、事業をやめたときにしか共済金を受け取ることができないという難点があります。
途中で解約することもできますが、掛金納付期間が20年未満の場合は、
受取り金額が掛金合計額を下回ってしまいます。
ただ、掛金を減額や掛け止めすることもできますし、
掛金の7~9割程度を限度に貸付を受けることもできますので、
それほど大きな難点と考えなくてもよいかもしれません。
交通費も医療費控除ができる
医療費控除の対象となる医療費というのは、
治療費や入院費用、薬代だけではありません。
入院や通院のためにかかった交通費も医療費控除の対象になるのです。
電車やバスなどの公共の交通機関であれば、
領収書はもちろんなくても大丈夫です。
『○○病院 片道△△△円×2×○日=××××円』といったように、
病院ごとにかかった交通費の金額をメモに記載し、
医療費の領収書と一緒に税務署に提出するとよいでしょう。
自動車で病院に行った場合のガソリン代や駐車場代は
医療費控除の対象になりませんが、
タクシー代は対象となる場合があります。
それは、タクシーを使わざるを得ない病状の場合です。
では、どれほどの病状であれば控除の対象になるのでしょうか?
そのような基準はありませんので、
電車やバスで十分行けるのに贅沢をしてタクシーを使ったということでない限り、
対象となると考えてよいでしょう。
ただ、必ず領収書を提出しないといけませんので、
忘れずに発行してもらってください。
シロアリ駆除で還付が受けられる
シロアリを駆除した費用は、「雑損控除」として所得から控除してもらえます。
「雑損控除」とは、生活上の資産が災害、盗難、横領の被害を受けた場合に
受けられる控除のことです。
盗難に遭った場合や、台風や地震で家が被害を受けて修理をした場合など、
その被害額や修理費用が5万円以上であれば控除の対象となるのです。
(詐欺による被害は対象になりません)
害虫被害も自然災害の被害ということで「災害」に含まれるので、
シロアリを駆除した費用も雑損控除の対象になるのです。
(シロアリ駆除の費用-5万円)が控除できますので、
シロアリ駆除をした方は確定申告をすると所得税が下がります。
(サラリーマンや年金所得者の方は還付されます)
また、被害額が大きくて控除しきれない場合は、
翌年以降3年間繰り越すこともできます。
サラリーマンなどで確定申告をしていない方は、
5年間さかのぼって確定申告ができますので、
まだの方はぜひ申告しましょう。
雑損控除は、医療費控除と同様、確定申告が必要です。